特定社会保険労務士の和田栄先生が執筆された、人件費削減のテクニックが満載の本です。中小企業の人件費を減らすための様々な方法が取り上げられていますので、ここでいくつか簡単に紹介させいただきます。
・固定残業手当
→残業時間にかかわらず、固定の金額で残業代を支払う。
・残業の申請主義
→残業をする場合は、残業する理由や予定残業時間を書いた指定の申請書を事前に上司に提出させる。
・ノー残業デー
→週に何日か残業を禁止する日を作る。
・昇給表、基本給表の作成
→昇給、降給に関するルールを明確にし、社員に公表する。
・結婚祝金、出産祝金の支給
→家族手当を廃止し、浮いた財源を結婚祝金や出産祝金の支給に回す。
・賞与原資のルール策定
→賞与原資の計算方法を決めて、社員に公表する。
・パート社員の活用
→正社員に残業させる代わりに、人件費が安く社会保険料の負担がないパート社員を活用する。
・再雇用制度の活用
→高年齢雇用継続給付金を利用し、社員の手取り額をそれほど減らさずに人件費を減らす。
・派遣社員の活用
→社会保険料、有給休暇の負担がない派遣社員を活用する。
・月末入社を避ける
→入社日を月初にして社会保険料負担を減らす。
・退職日を月末以外にする
→退職日を月末日の前日までにして、社会保険料負担を減らす。
・給料、賞与の支払い方の見直し
→賞与の健康保険料、厚生年金保険料の上限を活用すれば、同じ年収でも社会保険料負担を減らすことができる。
・昇給は4月を避ける
→4月に昇給すると、それ以外の時期の昇給と比べて向こう1年間の社会保険料が高くなることがある。
・繁忙期に昇給しない
→繁忙期に昇給すると、それ以外の時期の昇給と比べて社会保険料が高くなってしまうことがある。
・賞与を退職金に回す
→賞与を退職金に回すと、社会保険料の負担がなくなる。
中小企業の経営者にはあまり知られていない方法も多く、人件費の負担に悩む社長さんにはおススメの本です。
ただし、実際に上記の方法を実践するにあたっては注意が必要です。
例えば固定残業手当の導入に際しては、就業規則の変更や雇用契約書の改定が必要となり、基本給の一部を固定残業手当に回す場合には労働者の同意が必要になります。こういったきちんとした手順を踏まずに制度だけ導入しようとすると、労働基準監督署から是正勧告を受けたり、社員から不利益変更で訴訟を起こされるリスクがあります。
こうしたリスクを減らすには、人事・労務の専門家である社会保険労務士にご相談いただくのが一番です。人件費の負担にお悩みの経営者の方には、ぜひ社会保険労務士をご活用いただければと思います。
(執筆:粳間)